名古屋大学 理学研究科

物性理論研究室 量子輸送理論グループ(S研 Stグループ)

回転対称性から導き出されるフォノンの保存角運動量

1915年にアインシュタインとド・ハースが磁石の起源を探る有名な実験を行いました。 この実験は、磁石の磁化を反転させると磁石が回り始めるというものであり(アインシュタイン-ド・ハース効果)、 磁化と角運動量が関係していることを明らかにしました。 このアインシュタイン-ド・ハース効果の逆効果に、物体を高速に回転させると磁化するというものがあり、バーネット効果と呼ばれています。 スピントロニクスでは様々な自由度の間の角運動量の転換を考えますが、 このアインシュタイン-ド・ハース効果も局在スピンと格子の間の角運動量の転換という観点から現代的な興味の対象になっています。

近年、フォノンのホール効果などを通じて、フォノンが持つスピン角運動量というものが提案されました。 このフォノンスピン角運動量は、局在スピンの緩和などで重要だと報告されています。 私達は、フォノンの角運動量を回転対称性の観点から調べ、近年報告されたフォノンスピン角運動量の他にフォノンの軌道角運動量があることを発表しました。

スピンフォノン結合 -- フォノンによるスピン緩和

フォノンスピンが局在スピン緩和に重要だということはGaraninら[1]によって指摘されましたが、 私達はフォノンの軌道角運動量も局在スピン緩和に同程度の寄与をするということを発見しました [2]。

図1: 図の真ん中にある局在スピンがフォノン軌道角運動量に角運動量を逃す。
[1] D. A. Garanin and E. M. Chudnovsky, Phys. Rev. B 92, 024421 (2015).
[2] Jotaro J. Nakane and Hiroshi Kohno, Phys. Rev. B 97, 174403 (2018).
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