トポロジカル絶縁体表面上の電子-マグノン輸送
トポロジカル絶縁体表面のディラック電子はスピン軌道相互作用が強い極限の状態にあると考えられ、磁性不純物をドープし強磁性を示す場合には、量子異常ホール効果が観測されています。近年では、磁化の揺らぎであるマグノンとの相互作用に由来する特異な輸送現象が調べられています。私たちは、このような系の電流や電子の熱流、マグノンの熱流、また、それらが引きずり合う効果に着目して研究を行っています。
ディラック電子の異常ホール電流（熱流）に引きずられたマグノンの熱流
ディラック電子がマグノンと共存する場合には、ディラック電子の異常ホール電流（熱流）に引きずられた横方向のマグノンの熱流が生じます（図1）。 私たちは、このような効果を微視的に計算し、この効果がトルクや磁気抵抗と関係があることを明らかにしました。
ディラック電子-マグノン相互作用に由来する異方性磁気抵抗効果
トポロジカル絶縁体表面のディラック電子は、一様磁化との結合では異方性磁気抵抗効果を起こさないことが知られています。私たちは、ディラック電子がマグノンと結合する場合には、引きずり効果によって、縦伝導の異方性やプラナーホール効果などの異方性磁気抵抗効果が起きることを明らかにしました。さらに、ディラック電子との結合により磁化の交換相互作用は補正を受けますが、この補正がマグノンに対して異方的に働くことにより、ディラック電子の絶縁体状態において、マグノンの熱流に関する異方性磁気抵抗効果が起きることを発見しました（図2）。
